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Étoile Data Lab | Deep Dive

データで読む8時間
タカスサーキット 夏の8時間耐久 2026

データ源 EnduraBase(etoile03 ライブ収集 DB, session 2348)/決勝 2026-07-26 09:00 JST スタート/生成 2026-07-27 00:18 JST

順位表には出てこないものが、タイミングデータには残っています。 11,256 本のコントロールライン通過記録から、この8時間がどんな構造をしていたのかを解剖しました。 耐久レースを見慣れた方ほど「そこか」と思える切り口を6つ選んでいます。

01

8時間耐久は、8時間走っていない

483

スタート〜チェッカー
418

実際に走った時間
64

中断(2回)
86.7%
緑旗率
9時10時11時12時13時14時15時16時17時
レース進行中(緑旗) 中断(赤旗)

全車が3分以上どこも1周も完了しなかった区間を「中断」として機械的に検出すると、 この日は2回ありました — 12:44:58→12:57:50(13分)/14:30:24→15:21:33(51分)。

公式には8時間のレースですが、マシンが実際に動いていたのは 418分(86.7%)。 残りはコース上の車両回収や安全確保のために、全車がその場で止まっていた時間です。 耐久レースの「8時間」は、走る時間と待たされる時間の合計なのです。

玄人ポイント:中断中もライダーの緊張とタイヤの熱は失われ続けます。 止まっている時間が長いほど、再開直後のリスクは上がる — それが次の話です。
02

13分と51分。
リスタートで何が変わったか

同じ「赤旗中断からの再開」でも、止まっていた長さで再開後のペースはまったく違いました。 再開後10周ぶんの全車中央値を重ねると、その差が一目で分かります。

78s81s84s88s91s平常時12345678910リスタート後の周回数
13分中断のあと51分中断のあと平常時の中央値 78.8秒

13分の中断のあとは、再開1周目からいきなり 79.0秒 — 平常時(78.8秒)とほぼ変わりません。タイヤもブレーキも冷め切っていなかった。

ところが51分の中断のあとは、1周目 90.2秒。 平常より10秒以上も遅い。しかも10周走ってなお 82.3秒までしか戻りません。 小径タイヤは熱容量が小さく、一度冷えると発熱に時間がかかります。 ブレーキも、そして1時間近く待たされたライダーの集中力も同じこと。

玄人ポイント:長い中断のあとの数周は、8時間で最も転倒が起きやすい局面です。 ここで「行ける」と勘違いした車が失うものは、稼いだはずの数周ぶんより大きい。 リスタート直後にあえて抑えて走れるかが、経験値の差がいちばん出るところです。
03

スティントの一生 ―
何周目がいちばん速いのか

ピットアウトから次のピットインまでを1本の「スティント」として切り出し、 460本すべてを重ね合わせました。縦軸は、そのスティント自身の中央値からのズレです。

-0.6-0.1+0.4+0.8+1.3そのスティントの中央値1591317212527スティント内の周回数

出だしの1周目は +1.11秒。タイヤが冷えていて、満タンの燃料で車重も重い。 そこから毎周じわじわ速くなり、18周目あたりで -0.35秒 と底を打ちます。 燃料が減って軽くなるぶんと、タイヤが完全に仕事を始めるタイミングが重なる場所です。 そして終盤、タイヤの摩耗でわずかに垂れ始める。

この曲線が意味するのは、スティントの最初の3〜4周は「捨て周」ではないということ。 合計で1秒以上を失っているので、ピットの回数を1回増やすということは、 停止時間に加えてこの立ち上がりのロスもまた背負うということです。 EXP クラスの標準的なスティントは 23周、EJ クラスは 19周でした。

車番チーム時間帯
33#33アップライズEXP14:19〜15:54
31#25TeamÉtoile 25号車EXP16:22〜17:00
30#25TeamÉtoile 25号車EXP09:01〜09:37
30#25TeamÉtoile 25号車EXP15:42〜16:18
30#7WINS&CLUBG&ASTEXP09:01〜09:36
29#72H’S+72Project-AEXP09:01〜09:35
玄人ポイント:「1周目が遅い」のはライダーの手加減ではなく物理です。 だからこそ、スティントを長く取れるチームほど1周あたりの平均が良くなる。 燃費を詰める作業は、単に給油回数を減らす以上の意味を持っています。
04

速い人ではなく、落ちない人が勝つ

耐久レースでよく言われることを、データで確かめます。各車のベストラップ全周回の中央値の差 — つまり「本気の1周」からどれだけ落ちずに8時間を刻めたか。 小さいほど、誰が乗っても、いつ走っても同じタイムが出ていたことになります。

#25TeamÉtoile 25号車
+1.39s
#72H’S+72Project-A
+1.56s
#12H’S+72Project-B
+1.67s
#1PEACE RACING SP
+1.92s
#11村タカハッチャン+タマデン
+1.97s
#8ニトロリョウタレーシング#8
+2.08s
#353LR&F.P&いろは
+2.14s
#13JDC+A.S.H.OIL①
+2.19s
#15マフラーの事ならアンレーベル
+2.25s
#71Vamos Racing
+2.31s

チーム Étoile #25 はこの指標で全38台中 1位(+1.39秒)。ベストラップは EXP 8位ながら、8時間を通じて最も“垂れなかった”グループに入ります。

逆に、ベストラップの順位と結果の順位を並べると乖離が見えます。 速さを持ちながら順位を落とした車、速さでは劣っても順位を上げた車。

車番チームベスト結果
#10WINS富ちゃんバーン6位12位-6
#68TSU大島製作所、俺塾ジャパン4位7位-3
#44ガレージアップライズ③11位14位-3
#41ニトロリョウタレーシング#411位3位-2
#7WINS&CLUBG&AST3位5位-2
#71Vamos Racing7位8位-1
#83Team モトストリーム16位13位+3
#72H’S+72Project-A5位1位+4
#25TeamÉtoile 25号車8位4位+4
玄人ポイント:1周のタイムは「そのチームで一番速いライダーの、一番良い1周」しか映しません。 8時間を刻むのは4〜7人ぶんの平均です。速さの絶対値より、 誰に交代してもタイムが落ちない体制を作れたかが順位を決めます。
05

周回遅れの海を泳ぐ

2.23
秒に1台
ラインを通過
84%
のラップが
他車と2秒以内で開始
1,313
周ぶん
トップが付けた差の合計
97

トップと最後尾の差

38台が1周1分15秒前後のコースにひしめくと、緑旗中は平均 2.23秒に1台が コントロールラインを通過する計算になります。全ラップの 84% は、 直前2秒以内に他車がラインを通過した状態から始まっていました。 つまりほぼ常に、誰かの視界の中にいる

トップの #72(H’S+72Project-A、331周)が他の全車に付けた周回差を合計すると 1,313周ぶん。最後尾とは 97周差。 速い車は8時間のあいだ、延べこれだけの回数「抜く」判断を強いられます。 そのすべてがリスクで、そのすべてが数十分の一秒の損失です。

玄人ポイント:単独走行のタイムが速いことと、 交通量の中で安定して速いことは別の能力です。周回遅れの処理では 相手を驚かせない抜き方が最優先 — 接触は自分だけでなく相手の8時間も終わらせます。 ここでの品位が、グラスルーツ耐久の文化そのものです。
06

このレースは、ピットレーンで決まった

各ピットの正味ロスを測ります。「ピットに入る直前の通過 → 出てきて1周を終えるまで」の実時間から、 普通に2周走った場合の時間を引いた値。つまりピットに寄ったせいで余計にかかった時間です (赤旗中断ぶんは除外)。

この値は種類でくっきり分かれます。ライダー交代だけなら中央値 59秒2分の停止義務を伴う給油なら 180秒。給油1回は交代1回のおよそ3倍以上重い。

#72H’S+72Project-A
10.7分/9回
#12H’S+72Project-B
12.1分/9回
#1PEACE RACING SP
13.0分/10回
#23ゼンマイセッティングサービス
13.7分/10回
#25TeamÉtoile 25号車
14.0分/10回
#30ももいろグロームGT
14.5分/10回
#68TSU大島製作所、俺塾ジャパン
14.8分/11回
#83Team モトストリーム
14.8分/10回
#48TeamÉtoile 48号車
84.9分/10回

そして EXP クラスの決着です。 優勝した #72(H’S+72Project-A)と2位 #1(PEACE RACING SP)は同じ周回数(331周)で、 その差はわずか 60.5秒でした。ところがピットでの正味ロスを比べると——

車番ピットうち給油正味ロス計
#72 優勝 9回2回10.7分
#1 2位 10回3回13.0分

優勝車はピットで 136秒ぶん有利だった。 決着の 60.5秒より、はるかに大きい差です。分かれ目は給油の回数—— #1 は残り時間わずかとなった 16:46:05 にもう一度給油に入り、そこで 158秒を失いました。 #72 はその給油を必要としなかった。

玄人ポイント:コース上の速さで言えば両者はほぼ互角でした。 勝敗を分けたのは「あと1回の給油が要るかどうか」—— つまり燃費と、スティントをどこまで引っ張れるかの設計です。 セクション03の「スティントを長く取れるほど1周あたりが良くなる」が、 ここで最終結果として現れました。8時間走って60秒差。 その60秒は、レース前の燃料計算の中に既にあったのかもしれません。
▶ レース全体のストーリー(EXP / EJ 2クラス)を読む
方法メモ。クリーンラップは pit_in=0 かつ 65〜150秒のもののみを採用(計測ノイズ・ピット出入りラップを除外)。 中断区間は「全車が3分以上1周も完了しなかった」空白として機械的に検出。 スティントはピット記録と中断で区切り、中断をまたぐものは分割しています。 クラスはエントリー区分に加え、ベスト 1分16秒5 を切った車を EXP として扱う実効分類です。 給油・交代の判別はピット停止時間からの推定を含みます。
データ源 EnduraBase(etoile03 ライブ収集 DB, session 2348)/決勝 2026-07-26 09:00 JST スタート/生成 2026-07-27 00:18 JST